カニの美味しさを決める「茹で」|魚政が中型釜にこだわる理由
良いカニを仕入れるだけでは、美味しい茹でガニにはなりません。
カニの種類、大きさ、身入り、その日の状態を見ながら、塩加減、火加減、茹で時間を調整する。
魚政では、仕入れと同じくらい「茹で」を大切にしています。

あえて中型の釜を使う理由
大量のカニを扱う出荷業者では、大型のスチームボイラーなどを使い、一度に多くのカニを茹でる方法もあります。
魚政では、あえて中型の釜を3台使用し、ガスバーナーで茹で上げています。
中型釜を使う理由は、カニの種類、大きさ、身入り、その日の状態に合わせて、火加減や茹で時間を細かく調整できるからです。
釜が大きければ、一度に多くのカニを茹でることができます。
しかし魚政が優先しているのは、一度に茹でられる数ではなく、一匹一匹をできるだけ良い状態に仕上げることです。

雄ズワイガニとセイコガニでは、塩加減が違います
雄のズワイガニと、雌のセイコガニでは、大きさも身質も異なります。
当然、適した塩分濃度や茹で時間も同じではありません。
さらに、同じ雄ズワイガニでも700gと1kgを超えるカニでは、火の通り方が変わります。セイコガニも、大きさや外子の状態によって仕上がりが異なります。
魚政では、雄ズワイガニとセイコガニを同じ塩加減、同じ時間で一律に茹でることはありません。
複数の中型釜を使い分け、そのときのカニに合わせて塩加減、火加減、茹で時間を調整しています。

大きさと状態を見ながら、茹で上がりを判断
カニは工業製品ではありません。
同じ重さであっても、甲羅の大きさ、脚の太さ、身入りなど、一匹ずつ状態が異なります。
水温やカニの量によっても、釜の温度の戻り方が変わります。
そのため、「何分茹でればすべて同じ」というものではありません。
釜の中の状態を確認しながら火加減を調整し、カニの大きさや量に合わせて、茹で上がりを見極めます。
数字だけでは決められない部分に、長年の経験が必要になります。

茹で上がった後の「洗い」も大切です
茹で上がったカニは、そこで完成ではありません。
魚政では、茹で上げたカニに圧をかけた流水を当て、アクや甲羅、脚に付いた汚れを一匹ずつ丁寧に洗い流します。
長時間、冷水の中に漬けたままにすると、カニが水っぽくなり、本来の味が薄くなることがあります。
そのため、必要以上に水へ漬けず、流水で手早く仕上げます。
この工程に対応しやすいことも、魚政が中型釜を使う大きな理由です。
カニを茹でるだけでなく、茹で上がった後をどのように仕上げるか。
ここまでが、魚政の「茹で」です。

多い日には約5,000匹。セイコガニの茹で
セイコガニの漁期は、11月6日から12月末までの約2か月間です。
限られた期間に水揚げが集中するため、多い日には約5,000匹を茹でることもあります。茹での作業には、5~6人がかりで対応します。
まず、仕入れたセイコガニを大きさや状態ごとに分けます。
その後、真水で締め、甲羅や脚に付いた泥や汚れを丁寧に洗い流します。
洗い終えたセイコガニは、専用のステンレス製のカゴへ均一に並べます。
カニを重ねすぎず、釜の中で熱と塩分ができるだけ均等に行き渡るように並べることも、大切な仕事です。
ある程度まとまった量を同じ釜で茹でることで、釜湯にカニの旨味が重なり、味に厚みが出ると魚政では考えています。



セイコガニの外子を「魔法の水」で整える
茹で上がったセイコガニも、圧をかけた流水で一匹ずつ洗います。
ここで重要になるのが、セイコガニならではの外子です。
外子に真水が当たると、わずかですが味が薄くなり、水っぽく感じられることがあります。
そこで魚政では、洗い終えたセイコガニの外子を、味を調えた専用の塩水に浸します。
魚政では、この塩水を「魔法の水」と呼んでいます。
外子の塩加減を整え、セイコガニならではの味を引き出すための工程です。
何百匹、何千匹と茹でる日であっても、この作業を省くことはありません。

茹で上がり後に、もう一度検品と仕分け
茹で上がったセイコガニは、検品を兼ねて、もう一度重さ別に仕分けます。
茹でる前だけでなく、茹でた後にも一匹ずつ確認することで、状態や大きさを揃えてお届けできます。
仕分けを終えたカニは冷蔵庫へ入れ、しばらく落ち着かせます。
茹でたてのカニは、すぐに食べれば温かさや香りを楽しめます。一方で、冷蔵庫で落ち着かせることで身と蟹味噌が締まり、味がなじんでいきます。
お届けするカニについては、茹で上がった後に適切に冷まし、味を落ち着かせてから発送します。

カニは、茹で方で味が変わります
同じカニを使っても、塩加減、火加減、茹で時間、茹で上がり後の処理によって、味は変わります。
大きな設備で一度に茹でるのではなく、その日のカニに合わせて中型釜を使い分ける。
茹で上がった後も、一匹ずつ洗い、検品し、仕分ける。
セイコガニは、さらに外子の味まで整える。
効率だけを考えれば、省くことのできる作業もあります。
しかし、そのひと手間がカニの味を左右するからこそ、魚政では手を抜きません。
仕入れたカニの良さを、できる限り損なわずに仕上げる。
それが、魚政の「茹でへのこだわり」です。





